【パンデミックと歌について】ユニセフがPata Pataをカバー

先日とりあげた、ミリアム・マケバによる楽曲”Pata Pata”を、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受けて、ユニセフがカバーしていました。
さて、本楽曲とコロナウイルスにどんな関係があるのでしょうか。

前回の記事はこちら↓

Pata Pata by Angélique Kidjo (official video) | UNICEF


No Pata-Pata


本楽曲とコロナウイルスの関係は”Pata Pata”の意味にありました。前回の記事でも触れたように、”Pata”とはアフリカの言語・コサ語で”touch”、触れるという意味。
ユニセフのカバーバージョンではそれを逆手に取り、”ソーシャル・ディスタンス”をとり、なるべく”触れないように”するよう呼びかけています。

曲中のコーラスにおいても、”No Pata-Pata”と歌っているのがわかります。と歌われています。

Pata Pata means to touch, which we shouldn’t do…

であったり、本来語りで”It’s Pata Pata Time!”と言うところを

It’s NO touch time!

とするなど徹底しています。

スペインかぜ(インフルエンザ・パンデミック)


以下では、さらに進めて、過去に流行した感染症に対してどのような歌が歌われてきたのかを少し見てみましょう。人々にとっての歌の役割が見えてくるかもしれません。
一般にスペインかぜと呼ばれる感染症は、史上最悪のパンデミックを引き起こしました。流行したのは第一次大戦後の1918~1920年ごろですが、その大戦より多くの死者を出したと言われています。


当時活躍していたアメリカのゴスペルミュージシャン、ブラインド・ウィリー・ジョンソンは大流行している感染症を目の当たりにして、”Jesus is coming soon”を作りました。


歌詞には、ウイルスに立ち向かう術を持たぬ人間が描かれています。当時の医学もウイルスには無力だったのか、”医者は何もできずに…病気に「スペインかぜ」という名前をつけた”と皮肉っています。
神への信仰を深めていく様子が描かれ、それだけでなく感染症そのものが神の思し召しであるような捉え方もしています。


スペインかぜの歌としてもう1つ有名なものが”influenza blues”(インフルエンザ・ブルース)です。


こちらも上記ブラインド・ウィリー・ジョンソンの楽曲と同じく、スペイン風邪の凄まじい流行に諦念の態度を示しており、無力な医者達には冷淡な言葉で評価しています。

このように見ていくと、医学の進歩と共に音楽も変化しているように感じます。
インフルエンザウイルスが初めて分離されたのは1933年のことのようで、スペインかぜ流行の際には決定的な治療法も見つかっていなかったということになるでしょう(もっとも、現在と同じようにマスクの着用が奨励され、人同士は離れるよう指示されてはいたようですが)。
そんな時には、”人類が団結すればきっと病気に打ち克つだろう”と言うメッセージがどこか空々しいものに聞こえてしまうかもしれません(勿論そういった内容の歌があってもおかしくはありませんが)。

一方で、現在ではそのようなメッセージの楽曲が溢れているのではないでしょうか。医学が発展し、ウイルスの存在は市民でも知ってるでしょう。コロナウイルスに対する応援ソングには、ブラインド・ウィリー・ジョンソンの時とは逆に、医療従事者への感謝が語られます。”人類はきっと勝利する”と歌われます。一致団結が呼びかけられます。
人間は今や感染症に対抗できるまでに発展した医学を手にしている。そんな矜恃が現在の応援ソングを生み出しているのではないでしょうか。

ひどく単純化すれば、ブラインド・ウィリー・ジョンソンにとっての「神」が、現代の人々にとっては「科学」になったと見ることもできるかもしれません。

追記


日本でもスペインかぜは流行しました。そのため何らかの作品が残っていても良いはずですが、私が知っているのは、演歌の始祖・添田唖蝉坊が「新馬鹿の歌」の中で

インフルエンザはマスクする
臭い物には蓋をする
ハテナ ハテナ

https://www.youtube.com/watch?v=rOkPy3bEIFQ

と政府への皮肉のための比喩として用いているものくらいでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました