Iko Ikoとは
“Iko Iko”はアメリカのフォークソングです。1965年、ディキシーカップが発表し、広く知られることとなりましたが、
元々はアメリカ・ニューオーリンズのフォークソングです。
昨年亡くなったDr.John(ドクター・ジョン)によって、ニューオーリンズの古い音楽が発掘された際にも歌われ、話題を呼びました。
ドクター・ジョンのアイコ・アイコは、Gumboに収録されています。
その他にも、シンディー・ローパー、キャプテン・ジャックなどがカバーしています。
マルディグラとマルディグラ・インディアン
はじめに背景として、この楽曲はマルディグラ・インディアン(Mardi gras)をテーマとしています。マルディグラとは、Mardi gras(Mardi=火曜日 gras=豊かな, 太った)と書き、謝肉祭の最終日という意味です。では、どうして謝肉祭の最終日が火曜日になり、それが豊かで、太っているのでしょうか。
謝肉祭は、英語でカーニバルと言い、四旬節に先立って開催される行事です。カーニバルのイメージ通り、宴やパレードなどが派手に行われます。
カトリックでは四旬節と呼ばれる約40日間、飲食を慎まなければなりません。その期間に入る前に肉や宴をめいっぱい楽しむ、という意味がカーニバルには込められています。四旬節の後には、キリストの復活を祝う行事《復活祭》が待っています。日本ではイースターという名前の方が有名かもしれません。
復活祭は、キリストが復活した日曜日に行われます。そこから四旬節の40日(日曜日を除く)遡ると、火曜日になります。ゆえに四旬節前最後の楽しみは《マルディグラ》と呼ばれるのです。
元ネタ①マルディグラ・インディアン同士の喧嘩
さて、ニューオーリンズのマルディグラ(マルディグラ・ニューオリンズ)は特に有名のようです。そのパレードの中で、ネイティブ・アメリカンの派手な伝統衣装に身を包んだ人々をマルディグラ・インディアンと言います。由来は奴隷差別から逃れてきた黒人とネイティブ・アメリカンの共存共栄にあるそう。
マルディグラ・インディアンはいくつかの《トライブ》と呼ばれるグループを結成しており、Iko Ikoはそのトライブ同士の衝突を歌ったものです。
元ネタ②
Iko Ikoの背景は以上の通りですが、直接の祖先は James “Sugar Boy” Crawfordが1953年に発表した”Jock-o-mo”でしょう。
マルディグラ・インディアンの掛け声に曲をつけたものと言われています。
“Jock-o-mo”とはどういう意味なのか?
Iko Ikoの歌詞にも、
Iko, iko
Iko iko un day
Jockomo feeno ah na nay
Jockomo feena nay
https://genius.com/Dr-john-iko-iko-lyrics
“Jock-o-mo”という歌詞が含まれています。”Jock-o-mo”とは一体どのような意味なのでしょうか?ジェームズ・シュガーボーイ・クロフォードはインタビューで以下のように語っています。
Interviewer: Listeners wonder what ‘Jock-A-Mo’ means. Some music scholars say it translates in Mardi Gras Indian lingo as ‘Kiss my ass,’ and I’ve read where some think ‘Jock-A-Mo’ was a court jester. What does it mean?
https://en.wikipedia.org/wiki/Iko_Iko
Crawford: I really don’t know. (laughs)
クロフォードも意味をよく知らないようです。
その他の歌詞
他の歌詞をみてみましょう。
My flag boy told your flag boy
“I’m gonna set your flag on fire”
もしくは、
My spy boy told your spy boy
“I’m gonna set your tail on fire”
歌詞内の”spy boy”や”flag boy”について。マルディグラ・インディアンの1つのトライブ内には役割とそれに準ずるランクがあるそうです。
スパイ・ボーイとは、列に先立って進み、他のトライブと遭遇しないかを見張る役割。フラッグ・ボーイとは、同じく列に先立って進み、スパイ・ボーイと協力して他のトライブの同行を自軍に伝えます。(参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%B3)
このことから考えると、上記の歌詞はそれぞれスパイ・ボーイ同士、フラッグ・ボーイ同士が挑発し合っている場面だと考えられます。
リズムが耳に残りやすくキャッチーな歌ですが、その歴史を探ってみるとなかなか面白い文化に溢れています。
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