科学史とは、その名の通り《科学に関する歴史》を扱う学問です。
科学は古代から現代に至るまで、どのような変化を遂げてきたのでしょうか。それだけでなく、科学とは一体何なのでしょうか。
ケプラーの法則や原子論、相対性理論はどのように発見されたのでしょうか。
問いは科学内にとどまりません。ガリレオ・ガリレイが地動説を理由に異端審問にかけられたのは有名な話ですね。科学と宗教はどのような関わりを持っているのでしょうか。
現在科学は、科学者という職業の人々が、国や企業に雇われて研究をするものと思われています。しかし、実は昔、大学で科学教育は行われていませんでした。いつから、国と科学は結び付いたのでしょうか。それは科学をどのように変えたのでしょうか。
などなど、科学自体に疑問を向けると、様々な問いが生まれます。科学史は、これらの疑問に回答する学問です。
今回は、科学史を学び始めるのに最適な本をいくつかご紹介いたします。
初心者の方も読むことができますし、科学史を専門的に学びたい方にもおすすめです。
①〈科学の発想〉を尋ねて 自然哲学から現代科学まで / 橋本毅彦
科学史を新しく学び始める場合は、こちらの本から読んでみるのがおすすめです。科学史と言っても、2500年前の古代ギリシャから、現代の素粒子理論の発展に至るまでとても幅広い分野に分かれています。
本書はその長い歴史を簡潔にまとめています。簡潔ながら重要なポイントをきっちり押さえているため、科学史の基礎知識を身につけることができます。入門書として最適だと思います。
②科学の社会史 ルネサンスから20世紀まで/ 古川安
①の本よりも詳しく学びたい方は、こちらの本がおすすめです。①で簡潔に記述されている部分の他、科学教育の制度、研究機関の各国(ドイツ、イタリア、アメリカなど)の歴史といった社会との結びつきに関して詳しくまとめられています。
まだ科学が科学者と呼ばれる専門家によるものではなかった頃から、《科学》というものがどのように変化していったのか、実際の歴史を追いながら見ていくことができます。
①の著者橋本教授も、①を読んだ後は本書をおすすめしていました。
③科学史からみた中国文明 / 薮内清
①、②は幅広く世界の科学史をカバーしてはいるものの、近代科学の主役となる西洋の記述が多めです。西洋以外の科学史については、別途学習を深める必要があるでしょう。
まず、中国の科学史について。中国の4大発明(羅針盤、火薬、紙、印刷)に知られているように、西洋に劣らず自然現象を解明することに長けていました。しかし、西洋の近代科学が台頭するにつれて、科学・技術の世界での中国の存在感は次第に薄れていってしまうのです。
本書では当時の時代背景・社会情勢と共に、様々な分野の中国科学の発展についてまとめています。
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中国科学史と言えば、ジョセフ・ニーダムという科学史家が第一に挙げられます。中国科学史を学ぶ上で欠かせない人物ですので、そちらもチェックしておきましょう。
④科学の社会史 戦争と科学 / 広重徹
次は日本の科学です。明治維新以降の日本科学史を主題としています。
文明開化をした日本は近代科学とどのように出会い、どのように付き合っていったのでしょうか。よく科学・技術は戦争と共に発展すると言われますが、実際に科学は科学者だけでは成り立ちません。国、国の予算、世論などの社会的要因がその成長を大きく担っています。本書は題名に《社会史》とあるように、文明開化・戦争といった社会情勢の変化が、日本の科学をどう変容させていくかについて記しています。
日本科学史の名著です
⑤科学史技術史事典
科学史・技術史の様々なキーワードがまとめられている辞典です。中国・イスラム・西洋など津々浦々の科学史に関する単語が収録されています。
本辞典は大学院入試を受ける方にもおすすめです。学ぶべき膨大な科学史用語の簡潔な説明を得られるだけでなく、文献も示されているため、より深く学ぶための手がかりにもなります。
まとめ
科学史を学ぶにあたって、まずその全体像を知る必要があります。今回は科学史を学ぶのにふさわしい本のいくつか紹介しました。是非読んでみてください。
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